担当役員メッセージ

信頼の実績を礎に
未来をつくる攻めの戦略を実行

2021年に創業70周年を迎えたキッツグループは、創業以来、配管内を流れる水・空気・石油・ガスなどの流体をコントロールする流体制御技術の研鑽と材料開発の積み重ねにより、水やエネルギー等の安定供給や各種産業活動を支え、安心して暮らせる環境の創造、社会の安定維持に貢献してきました。世の中の当たり前を確実に支え続ける、これからもその姿勢に変わりはありません。

そのうえで事業活動の礎として、変化が激しく、不確実性の高まる環境下にあって、新たな時代の要請に応じる共通価値の創造を通じて、中長期的な成長の道筋を描き示し、わかりやすくお伝えしていくことが、社会及び企業のサステナビリティ（持続可能性）をより重視したSX（サステナビリティ・トランスフォーメーション）推進の第一歩であると考えています。
社会貢献や環境保全といった社会の要請を守りの戦略としてではなく、キッツグループの活動が貢献できる機会を一層拡大する、事業成長のきっかけとなる攻めの戦略として描き、一つずつ実現させていくこと、それが未来をつくる共通価値の創造にほかなりません。

守り鍛えてきた技術・素材の力を挑戦力でさらに発展・進化させ新たな花を咲かせる

キッツグループでは、「デジタル化」と「脱炭素化」という社会課題からのバックキャストによる重要課題として、「Digital＆ Green」をテーマに、バルブ事業の８つのターゲット市場における成長機会を設定しています。環境に配慮したモノづくり、材料の開発や製造プロセスを追求し、事業を通じて持続可能な未来に貢献することはもちろん、これまで培い、育ててきた技術・素材・実績を糧にさらなる高みを目指し、確かな成果として積み重ねています。そして、デジタル化の流れが従来の半導体装置・半導体材料以外の市場にとっても、また、脱炭素化の流れが水素・脱炭素化以外の市場にとっても、大きな成長機会になると捉えています。

例えば、能登半島地震の被災地に設置した簡易浄水装置は、8つのターゲット市場のうち水処理市場向け製品の一つです。水処理におけるグループシナジーの創出に向け、2023年から活動をスタートさせた環境ソリューション事業部では、災害時の断水や原水の水質悪化等に対応するBCPの一端を担うだけでなく、水道インフラの老朽化が全国的に進む中、特に過疎地域などにおける新しい上水インフラのあり方を提案しています。また、島しょ部における限りある水資源を守りながら、島外からの観光客の受け入れを両立させる地域創生の一助となるような提案も行っています。

その具現化の先例として、企業版ふるさと納税制度を活用して、伊平屋島（沖縄県）・西川町（山形県）・小松市（石川県）に浄水処理装置を納品し、それぞれの地域課題の解決に役立てていただく機会を得ることとなりました。愚直に守り育ててきた技術が、時流の変化とともに、新しい社会貢献の形と事業領域拡大への道筋を描き始めている一例であり、まさに、サステナビティスローガン「つくる未来　のこす未来」の体現です。

キッツグループらしさを活かしながら「新しい流れ」をつくる体制の構築へ

また、フォアキャストの視点からは、自社の強みである「素材からの一貫生産による品質と信頼性に裏付けされたブランド力」、「多品種少量生産を可能にするシステム」及び「グローバルかつ多領域に展開するバランスのとれたポートフォリオを維持している盤石な基盤」を基点にコア事業として維持・強化する分野にも積極投資していきます。

加えて、SX推進における重要課題を「人財」「ガバナンス」「情報開示」と定め、人財面では「働きがい」「働きやすさ」の向上を重視し、社長が世界中を回り、社員と直接対話をして思いを共有する「KITZ Group Engagement Forum」を毎年開催しているほか、各種取り組みを強化しています。

ガバナンス面では、指名委員会等設置会社に機関設計を変更しました。これまで以上に高い透明性と迅速な意思決定の実現を目指すとともに、投資家の期待に応えるSXの推進やキーワードに沿った丁寧な開示と情報の充実に向けたIR戦略の強化も進めていきます。
このようなサステナビリティ経営の推進により、人々のくらし・社会・産業のインフラを安定的に支えながら、新たな共通価値の創造による成長の「新しい流れ」を築き、さらなる企業価値の向上を通じて社会と企業のサステナビリティ実現に邁進していきます。

執行理事　　　
経営企画本部長
大田　裕

サステナビリティ経営
（全体像）